2024/08/05(月)
土地の時効取得についてご紹介します!
所有権を持たずに長年土地を占有し、その土地を所有したいと考えている人の中には、土地の時効取得について詳しく知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、土地の時効取得とは何か、また時効取得の手続き方法について、また相続財産の時効取得は難しいことについてご紹介します。
土地の時効取得とは
民法において土地の時効取得が認められている趣旨は、「長期間継続した土地の占有を保護し、法律関係の安定を図ること」にあります。
形式的に見れば所有権がないとしても、事実上所有者として土地を占有した状態が長期間続いているならば、その状態を維持することが当事者にとって合理的であり、不都合も生じないと考えられます。
そのため、権利を行使しなかった所有者には所有権の行使を許さず、むしろ長期間継続した占有状態に法的な権利としての所有権を付与し、紛争を防止することが意図されています。
1: 土地の時効取得の要件と立証責任
土地を時効取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
・20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ公然と他人の物を占有すること(民法162条1項)
・10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ公然と他人の物を占有し、その占有の開始時に善意無過失であったこと(同条2項)
※「他人の物を」という条文上の要件がありますが、自己物の時効取得も判例上認められています(最高裁昭和42年7月21日判決)。
時効取得の手続き方法
1: 時効の援用
土地の時効取得を主張するには、所有者に対して時効の援用を行う必要があります。
通常、これは裁判を通じて行われますが、裁判を起こさずに時効の援用を行う場合、所有者に対して内容証明郵便で時効の援用を通知する方法が一般的です。
所有者が時効取得を認めない場合、訴訟を起こして裁判上で時効の援用を行います。
2: 所有権移転登記の手続き
土地の時効取得が認められた場合、新たな所有権者(時効取得者)が土地の所有権を主張するために、所有権移転登記を行う必要があります。
民法では、原則として旧所有者と新所有者が共同で登記手続きを行うことが定められています。
ただし、所有権移転登記手続請求訴訟を通じて時効取得が認められた場合、確定判決に基づいて時効取得者のみが登記を行うことが可能です。
3: 手続きにかかる費用
土地を時効取得する手続きには以下の費用がかかります。
・登録免許税
土地の評価額の2%が課税されます。
・不動産取得税
土地の評価額の3%、宅地の場合は土地の評価額の半分が課税対象となります。
・所得税・住民税
時効によって取得した土地は「一時所得」として扱われ、確定申告が必要です。所得税と住民税が課税されます。
・弁護士・司法書士費用
裁判代理を行う弁護士や登記手続きを行う司法書士には報酬が支払われます。費用は法律事務所や土地の価額によって異なります。
・訴訟費用
所有権移転登記請求訴訟を提起する場合、印紙代や郵便費用などの訴訟に関わる費用が発生します。
相続財産の時効取得は難しい
共同相続の場面では、親や親族が亡くなり、長年にわたって土地を自分の所有物として占有してきた場合、その相続財産を時効取得することは認められるのでしょうか。
1: 相続財産の占有が他主占有となる場合
遺産分割が未了である場合、遺産は他の相続人と共有される状態にあります。
このため、自分が土地を所有していると主張しても、他の相続人と共有する土地を管理している立場にあります。
このような場合、遺産分割が未完了である限り、自分だけの自主占有としての主張は否定され、時効取得は原則として認められません。
2: 自主占有が認められる場合
ただし、特定の事情がある場合には、遺産でも自主占有が認められることがあります。
例えば、生前に贈与や売買によって土地を取得したと信じていた場合や、固定資産税を自分の名義で支払い、土地の収益を単独で得ていた場合、他の相続人が異議を唱えなかった場合などです。
また、他の相続人の存在を知らずに占有していた場合や、建物を建てて自分の所有を主張していた場合も考えられます。
最高裁判所の判例や先例によると、相続財産の自主占有を主張するには厳しい条件を満たす必要があります。
長年にわたる占有の事実だけでは自主占有と認められることは難しいでしょう。
まとめ
要件を満たせば土地を時効取得できます。
時効取得の手続き方法としては、時効の援用、所有権移転登記の手続きが必要です。
しかし、相続財産の時効取得は難しいため注意が必要です。
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